2012年7月30日月曜日

劇場における“教育”の側面



日中国交正常化40周年を記念し両国の国立劇場である、新国立劇場と中国国家大劇院が、オペラの共同制作公演を行い、7月27、29日に新国立劇場にて『オペラ・アイーダ』が開演された。欧米の歌劇場で活躍する日本、中国の歌手陣が揃い、両劇場の総勢100名の大合唱とともに、祝祭的なオペラ「アイーダ」を歌いあげる。
今回私は当劇場の〝アカデミックプラン〟のプレゼントキャンペーンに当選し、観劇することとなった。アカデミックプランとは、25歳以下の青年が対象で、オペラのS、A席のチケットが5000円、バレエ、ダンス、演劇のチケットが定価の半額で購入できる。また、オペラのゲネプロを無料で観劇でき、定期的にイベントやお得な情報が届くという活気的な企画である。参加方法は新国立劇場のサイトで登録し、抽選に応募するというものである。私は前回当選した「ローエングリン オペラゲネプロ鑑賞会」の観劇を含め、今回が二回目の参加となった。以下に、当プランの仕組みや、劇の感想を述べる。当選のメールには、チケットの受け取り方法の他、以下のような事項が記されていた。


「2つほどお願い」
ひとつめ:日中の共同企画のこの公演は、中国側も素晴らしい歌手に参加していただいております。国を超えたこのパフォーマンス、互いをリスペクトし合い、きっと素晴らしい音楽が奏でられることと思います。どうぞ観客の皆様は良い演奏には惜しみない拍手と、「ブラボー!」の声をよろしくお願いいたします。
ふたつめ:夏の暑い時期のこの演奏会、特にドレスコード(服装指定)はありませんが、よろしければちょっとお洒落していらっしゃいませんか?皆様のような若いお客さまがちょっと素敵な格好でいらっしゃいますとロビーの雰囲気や公演全体が華やかになりますので。


このように、劇を盛り上げてもらおうという意図が伝わる。とりわけ、今回は記念すべき日中国交正常化40周年という国家間の重要な行事でもあるため、当選者は祝賀ムードを盛り上げる要因でもある。チケットの受け取り方法は、アカデミックカウンターにて名前を告げ、チケットを受け取るという簡単な方法であり、他の機関を通すことが一切ないため利用し易い。席は一階席と無料招待にしては好待遇であり、四階席で観たゲネプロに比べ、音の響きも格別であった。
場内の客層を見渡すと、客層は老年代の方が多い。アカデミックプランは、格式が高いというイメージや、金銭面で劇場に足を運び辛い若い世代に対し、様々な企画を設け、そのような“制限”を緩和する目的があるのだろう。残席を埋めるという目的ならば、対象を限定する必要はないが、なぜ“若者”に向けているのか。
以下は、パンフレットに記載している新国立劇場についての一部抜粋である。

若い世代に優れた生の舞台を鑑賞する機会を提供することも重要な役割の一つとしており、「高校生のためのオペラ鑑賞教室」、「こどものためのオペラ劇場」、「こどものためのバレエ劇場」などの教育・普及公演を開催し、将来の観客育成にもつとめています。


アカデミックプランは上記の企画の対象者に比べ、年齢層の高い、より学究的な者を対象としている。芸術とは無目的である、芸術を享受するには段階を踏む必要がある、という考えがある。私は、芸術が人間に及ぼす影響とは何か、という問いに確実な答えを出すことはできない。また、芸術を教育の目的とするにしても、その成果ははっきり表れるものではない。しかし、芸術とは定義できない。ある種、未知の可能性を秘めている。また、歴史的にも明らかであるが、芸術は大きな影響力を持つ。ならば、芸術に“教育”という目的を持たせ、最も感受性の豊かな世代に対し、最も上質な芸術を提供することは望むべきことではないか。今後も劇場に、芸術をさらに“教育”の面でも発展させていって欲しい。

日中国交正常化40周年記念 2012「日中国民交流友好年」認定行事
オペラ「アイーダ」<コンサート形式/カットあり>東京公演
台本 アントーニオ・ギスランツォーニ  作曲 ジュゼッペ・ヴェルディ  
日時:7月27日(金)5:00 29日(日)2:00
会場:新国立劇場オペラパレス
指揮:広上淳一
出演:ヘー・ホイ/水口聡/清水香澄/ユアン・チェンイェ/妻屋秀和/ティエン・ハオジャン
合唱:新国立劇場合唱団 国家大劇院合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

(茶 A.O)

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